English sparkling wine -- Gusbourne press lunch
先日、虎ノ門エディションで、Gusbourneによる、初リリースとなるプレスティージュ・キュヴェ「51°N(フィフティワン・ディグリーズ・ノース)」のお披露目ランチが開催されました。
Gusbourneは、トップクラスのイギリスのスパークリング・ワインですが、2018年に、ロンドンでのWSET Diploma卒業式のあと、現地を訪問したことがあり、またアンバサダーのLaura Rhys MSともロンドンで何回かお会いしたりとご縁があります。以前、Forbesのワインコラムに、記事も書いています。(こちら)
今回は、Lauraさんも含め、Gusbourneから3名が来日してのローンチ・イベントで、とても楽しみに参加しました。
以下、Lauraさんによるプレゼンテーションのまとめです。
イギリスのワイン産業
Gusbourneは、2004年に世界のトップワインに肩を並べるワインを創る目標で設立されました。
Gusbourneも含め、イギリスのワイン産地は、大部分がイギリスの南東部にあります。1980年代後半に、瓶内二次発酵の伝統製法によるスパークリング・ワインが造られ始め、その歴史は、約30年間と歴史が浅いのですが、ダイナミックでクリエイティブで、注目の産地です。
1980年代(211 ha)から2010年代(2,200 ha)にかけて、ブドウ栽培の面積は急拡大しました。現在では、約4,000ヘクタールの栽培面積。これは、ロワールのPouilly-FumeやSancereくらいで、かなりの大きさになります。
ただ、畑は、植密度が低く(low density)、低収量のため、イギリス全体で生産量は約1千万本ほど。シャンパーニュの3億3千万本に比べると、まだ小さい生産量です。
こうした小規模の生産者ばかりですが、情熱をもってワイン造りに取り組んでいます。
Gusbourneについて
北緯51度に位置し、ブドウ栽培の北限で厳しい気候ですが、気候変動の影響もあり、現在では伝統製法で造るスパークリング・ワインの産地として良い環境が揃っています。例えば、生育期間(hungtime)が長いので、高い酸を保ちながら、フェノリックの成熟度が高いブドウが収穫できます。
Gusbourneでは、(買いブドウはなく)すべて自社畑のブドウからワインを造っています。「品質は畑から始まっている」とローラさんが説明するとおり、100%、自分たちでコントロールできるためです。栽培方法は、できる限りサステイナブルな農法を採っています。
栽培
畑は、ケント州に60ヘクタール、サセックス州に30ヘクタールを所有。この2つの場所は、80マイルほどしか離れていないのにとても異なるワインが出来上がります。
ケント州の畑は海岸から6マイルの距離で、海岸から近く、海抜1~2メートルと低い標高。土壌はリッチな粘土土壌と場所によっては砂質土壌。粘土土壌は、熱と水分を保ち、ここで育つブドウは、成熟度が高く、力強く重厚なワインになります。
サセックス州の畑は、海岸から10マイルの距離。石灰質土壌で、若干海抜も高い場所にあります。ここからは、エレガントで酸が高いワインができます。
冷涼なイギリスでは標高が重要となり、高すぎると涼しすぎて果実がよく熟しません。
これらの畑で、シャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエの3品種を、異なるクローン、異なる台木で植えています。
醸造
こうした異なる畑、品種を別々に収穫し、醸造します。これにより、毎年、約250種類ものベースワインができあがり、テイスティングを重ねた上で、キュヴェごとにブレンディングしていきます。
ブレンディングは、1月~3月の間、ローラさん、醸造長、アシスタント醸造家の3名でブラインドテイスティングで行います。
ブレンディングのポイントは、「その年の個性、Gasbourneのスタイルをワインに表現すること」。
その後、瓶詰めして、澱と共に瓶内熟成。(ワインによって2年半から8、9年間)この澱熟成により、複雑さが加わりますが、リリースのタイミングは、テイスティングにより官能検査で決定します。
テイスティング: Blanc de Blancs & Blanc de Noirs
今回は、初リリースとなる「51°N」の前に、Blanc de BlancsとBlanc de Noirsを3種類ずつ、試飲しました。
上述の、毎年のブレンディングの試飲のときに、多くのベースワインのなかから、きらりと光る、特別な、その場所の個性を表したものがあります。
2017年に、こうした傑出したワインを、別に瓶詰し、いわゆる単一畑のキュヴェを造ることにしました。これらは、実験的に少量で造られ、一般に販売するためのものではなく、自分たちの畑を理解するためのライフタイム・プロジェクトとして生まれました。
今回は、そのうち、シャルドネ100%の単一畑のBlanc de Blancsを2種(以下、1と2)と、ピノ・ノワール100%の単一畑のBlanc de Noirsを2種(以下、4と5)を試飲した上で、ブレンドして造られる(リリースされている)Blanc de Blancs(3)とBlanc de Noirs(6)を試飲するという、特別な機会に恵まれました。
これは、Gusbourneの、そしてイギリスのスパークリング・ワイン産地の土地の特徴をつかむ上で、とても興味深いものでした。
(1) Gusbourne Blanc de Blancs Single Vineyard Selhurst, Sussex 2017
サセックス州の「Selhurst」畑のシャルドネ100%のブラン・ド・ブラン。海抜100mで、石灰質、火打石(フリント)の土壌。ガズボーンのなかで最も標高が高い畑で、そのため、常に収穫が遅い場所。これは果実のスタイルにも表現されています。
以前は牧草地だったので、大きな機械が使われたことはなく、土壌が壊れていないので、薄い表土のすぐ下にはチョークの塊があります。ワインの特徴は、イギリスのスパークリング・ワインに特徴的な、柑橘(ライム、レモン)や青リンゴといった、精緻な果実で、エレガントなワイン。そして、透明感のあるフレッシュさ。
(2) Gusbourne Blanc de Blancs Single Vineyard Commanders, Kent, 2017
ケント州の「Commanders」畑のシャルドネ100%のブラン・ド・ブラン。2006と2007年に植樹されました。(1)と対照的に、2017年は収穫が一番早かった畑。より成熟した果実で、重心が低い、筋肉質なワイン。そして、海のような、塩味のニュアンスがありますが、これはローラさんが、いつもケント州のシャルドネから感じるそう。エレガンスと重さが共存していて、ローラさんお気に入りの畑だとか。
(3) Gusbourne Blanc de Blancs 2018
ブレンドで造る、定番のブラン・ド・ブラン。約60種類のベースワインで構成されます。柑橘、白桃の果実と、オートリシスから来るトーストとのバランスが良いワイン。
2018年は、非常に暖かい年で、イギリス全体にとって良い年となりました。成熟した、寛容でふくよかな果実が感じられますが、このような暖かい年は、サセックスのブドウが鍵となります。これにより、石のようなニュアンスやフレッシュネス、酸味が加わります。
(4) Gusbourne Blanc de Noirs Single Vineyard Down Field, 2017
サセックス州の「Down Field」畑の100%ピノ・ノワールのブラン・ド・ノワール。Gusbourneの畑のなかで、一番海に近く、標高も低く、木々に囲まれていて守られていて、成熟度が高いブドウが収穫できます。白桃、ネクタリンや軽めの赤果実。エレガンスと力強さが共存しているワイン。
(5) Gusbourne Blanc de Noirs Single Vineyard Boot Hill, 2017
ケント州の「Boot Hill」畑の100%ピノ・ノワールのブラン・ド・ノワール。Gusbourneのなかで最もブドウがよく熟す場所。ここからは、少量(全体の生産量の5%)のスティルワインを造る畑でもあるほど、成熟度が高いブドウが収穫できます。斜面の上の部分は、リッチな粘土土壌で、標高が低くなると砂質土壌。丸みがあり、濃いめの色合いの果実の特徴がでます。
(6) Gusbourne Blanc de Noirs 2018
ブレンドで造る、定番のブラン・ド・ノワール。ピノノワールらしい、力強さがあるワインを選び、赤果実だけではなく、より色の濃い、スパイスがきいた、ブルーベリーやプラムなどの青果実も感じるワイン。
今回初リリースの「51°N」については、Forbesの記事にてご紹介します。
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